はじめに
格ゲーにおける短期戦といえばまずランクマッチが連想されるでしょうが、大会で情報が無い相手に2先を勝ち切ることや、団体戦の1先を勝ち切ることも短期戦です。
ランクマは相手が何やってくるかわからない
荒らしプレイばかりだ
プレマで勝てるキャラにも安定しなくて苦痛だ
休日の12時間でポイントを溶かしただけだった
みなさんもどこかで聞いたことがありますよね?
もしかしたら言っている人もいるかもしれません。
ここで「ランクマはつまらない。プレマしている方が良い」となってしまうのは危険だと私は考えています。
もし、大会で知らない相手と対戦して勝つために必要はことは何でしょうか?想像してみてください。
自キャラの攻略と相手の使用キャラの対策を練って、常に最大期待値をとれる立ち回りを構築し、それを再現するための反応や操作を身に付ける。
といった、一見真っ直ぐに見える取り組みが私なりの模範解答ですが全てが正解ではありません。
こういった取り組みにはその時点でのプレイヤー個々の経験(やり慣れてるか)・反応・処理速度・操作の限界に大きく影響を受けます。
メルティブラッドは分厚い下段択を刻まれて唐突に飛んでくる29Fの中段を食らったら3.5割+表裏起き攻めをされるゲームです。
大会で「あ、今日はこの中段食らってしまうな」と感じた時、用意した対策が機能しなかった時、ゆるやかに負けるのをただ待つだけで良いのでしょうか?
前置きが長くなりました。
今回は先述した格ゲーらしい真っ直ぐな取り組み(キャラ攻略・対策)とは別のアプローチで、短期戦の勝率を高める方法について書いていきます。
ストーリーの精度について
格ゲーの対戦には、自キャラの攻略と相手キャラの対策をベースにこの対戦カードはだいたいこうなるよね?という想定があるかと思われます。
これをストーリーと呼んでいます。
ざっくりした例えになりますが、自分が近距離で力を発揮するキャラ、相手が遠距離で力を発揮するキャラを使用していたとします。
遠距離では相手の強い行動に対しての回答を用意し、接近するための手段を考える必要があります。この間合いでは基本的に相手キャラの強みにどう上手に付き合うかが求められます。
中距離では接近したい自分と距離を空けたい相手との工夫がぶつかり合い、相手の行動に付き合うだけだった遠距離よりも濃い駆け引きが発生します。
近距離ではようやく自キャラの強い間合いに入ります。自キャラの強みを活かしてダメージを取り、相手キャラの逃げや割り込みを許さないように工夫します。
このようにストーリーの役割は、自キャラの攻略と相手キャラの対策をベースに、対戦「前」に勝つまでの試合内容を想定することです。
抽象表現になりますが、対戦とは緻密に練り上げられた互いのストーリーのぶつけ合いと表現することも出来ます。
ストーリーを練り方については先述した、「自キャラの攻略と相手の使用キャラの対策を練って、常に最大期待値をとれる立ち回りを構築し、それを再現するための反応や操作を身に付ける」といったことが必要となります。
今回の記事では正攻法でストーリーを練ることとは違ったアプローチの話になりますので深く掘り下げずここまでとさせていただきます。
たたし、ストーリーを練ったとしても、実際問題相手の全てを想定できるとは限りません。
ランクマや1先想定では、コンボ中やラウンド間くらいしか思考を整理する時間がないので、一所懸命ストーリーを再現しようとしたけれど相手のストーリーの精度が高くてよくわからないまま負けてしまった、と言ったことがよくあります。
そういった負けを覆すためには、相手の力量を測るための「モノサシ」と、モノサシで計測した情報を元にストーリーに使用している選択肢を取捨選択する「引き出し」の事前準備がおすすめです。
対戦前のモノサシと引き出し用意
相手の知識量・操作精度・状況ごとの傾向を読み取るための、事前予想と計測するための基準がモノサシをつくるうえで重要になります。
そして、モノサシから得た情報を元にストーリーで使用しているパーツを組み替えていくためには自キャラ・ゲームシステム・対策によって蓄えられた選択肢の引き出しが必要となります。
例えばここに、ファジーもキャラ対策もシステム活用も発展途上で、ゲームシステムの理解とキャラ攻略はコツコツ頑張って知識があるシエル使い(少し前の私です)が居るとしましょう。
ランクマッチでは近い実力の相手と当たるように設計されているので、自分が出来ていない、知らない、苦手なことは相手もそうである可能性が高いといった視点を持つことが出来ます。
そこでどのように思考するのかと言うと、
●自キャラ固有の状況(技、固め、起き攻めなど)の対策されていない可能性が高い
●立ち回りの飛びに対してファジーを組むのが苦手である可能性が高い
●空中制御の使い分けに手癖がある場合が多い
●手癖のフォローで対の選択肢を用意できていないことが多い
●シールドの成立後の駆け引きに手癖がある場合が多い
●コンボ中の補正切りのケアが薄い(D受け身の価値を知られていない)場合がある
などなど
ここはある程度自分の独断でアタリをつけても良いです。
同ランクで戦う場合は「自分が苦手なところは相手も苦手なはず!」と考えられるのも良いですし、自分より一つ下のランクにさらに勝率良く勝つためには?といった視点から練る練習をするのもおすすめです。
一つずつ見ていきましょう。
●自キャラ固有の状況(技、固め、起き攻めなど)の対策されていない可能性が高い
キャラ攻略の色が濃い内容なので流し読みして雰囲気を掴んでください。
シエルでしたら代表的なのはB黒鍵と画面端固めと起き攻めによるシステムケアです。
B黒鍵は使用する距離・ガードバック・派生タイミングのコントロールをすることで駆け引きを複雑にすることが出来ます。
中央でしたらファジーで幅広く対応できる場合がありますが、対策が漏れていると黒鍵読みのシールドや2派生目ガード後に最速行動やシールドを選択しがちです。
黒鍵の対策に不慣れだと計測できれば、5Aなどをガードさせた後に無理に崩しにいって被弾リスクを追う必要はなく、B黒鍵固めの展開に持っていくのが良いでしょう。
また、シエルの画面端の固めは-1F状況からノーキャンセル5Fが届くという全キャラ唯一の特殊な状況を作ることが出来ます。
この前提を武器に、暴れ、シールド、ファジーのそれぞれにリスクを負わせて画面端高火力コンボを狙うのがシエルの強みです。
中央B黒鍵への対応を知られていない場合は画面端固めの仕様と読み合いについても知られていない可能性が高いので、画面端に相手を持っていくことの価値は高く見積もると良いでしょう。
そして、シエルは多くの状況で5F無敵にガードが間に合う空中攻撃起き攻めが可能です。
無敵をガードし、両開放を仕込みシールドで対応しつつ、MDをされても有利フレームを取ることが出来ますが、全て認知されているとは限りません。
もし相手に起き上がり開放やMDをされた際には、コンボの〆に安定する5Fケア空中攻撃起き攻めを選択すると良いでしょう。
自分もネコアルクのことよく知らないけど、あなたもシエルのことよく知らないでしょ!という視点は大切です。
●立ち回りの飛びに対してファジーを組むのが苦手である可能性が高い
非常に展開が激しいゲームなので、相手の空中攻撃をガードしてしまう際、咄嗟にファジーを組むのが難しいです。
立ちシールド読みのスカし打撃を通さないようなファジーAや、空中制御でタイミングをズラした様子見にファジーJAなど、自分が出来ている必要はありません。同ランクで対戦する際は、自分が苦手なことは相手も苦手なのでは?という視点を持ってみましょう。
相手の上を取った時や低空ダッシュをした時に立ちシールドの配分が多いなと計測できたら、シールドを貼らなかった時にスカし対策をされない可能性が高いのでスカし下段を狙うと良いでしょう。
●空中制御の使い分けに手癖がある場合が多い
例えば相手のハイジャンプや2段ジャンプの下をダッシュでくぐった後のような状況です。
そのまま着地されるか、空中ダッシュなどの残っている空中制御で逃げられるか、あらゆる選択肢が想定されます。
が、よく考えてみましょう。そもそもハイジャンプや様子見ジャンプをする際に相手に潜られることを想定できる人がどれだけ居るでしょうか?
相手のこれさえ警戒していればOKという指標があれば話は別かもしれませんが、咄嗟の状況ではついつい私はワンパターンになってしまいます。
つまり、もしも相手のハイジャンプをダッシュで潜った時に、垂直ジャンプ様子見をされた際は、また同じように潜っても垂直ジャンプをされる可能性が高いと判断しても良いです。そして、ここで相手が修正を加えることが出来なければ無理に空対空や地対空で判定戦をする必要がないと考えることが出来るので、相手が空中攻撃が強力なキャラクターを使用している場合はストーリーにより優位に働きかかるでしょう。
●手癖のフォローで対の選択肢を用意できていないことが多い
先ほどの「対空シールドを使用するが、スカし択にファジーが出来ない」もここに含まれます。
頻繁に見受けられるのが、投げ抜けを入力するが、投げ抜け潰しの選択肢を用意していないケースです。
例えば画面端で投げ抜けを使用する相手に固め中2Aで割り込まれたとします。
そこで、投げ抜け入力の投げ漏れにも2Aにも低空ダッシュ攻撃が勝つので画面端の投げ周りでは低空ダッシュを軸にしようと組み立てられます。
相手が打点の高い技で割り込んでこない限りは有効です。
●シールドの成立後の駆け引きに手癖がある場合が多い
今バージョンはシールド周りが非常に複雑で書くか悩みましたが挑戦します。
こちらも、自分は完璧に扱える必要はありません。相手の知識や操作の抜け漏れを認識出来るかが重要です。
例えば中央で取られBCをした後に相手にディレイBCをされたとします。
相手のこの選択肢はゲージを消費するだけで終わる有効に機能しにくい選択肢なので、画面端での取りBカウンターやMG50未満でも5F無敵ケア空中攻撃にもシールドを選択するのでは?と想定でき、この相手にはシールドをケアする必要はないと決定づけることができれば選択肢の幅が広がるでしょう。
●コンボ中の補正切りのケアが薄い(D受け身の価値を知られていない)場合がある
おまけ程度です。
補正切りをされ慣れていないと、ついつい手拍子に空中受け身を取ってしまいます。
ミス依存ですが貴重な逆転要素なので1つくらいは用意しておいても損はありません。
他にも色々モノサシはありますが主要なものは以上となります。是非これらの事前準備に挑戦してみてください。
対戦前のモノサシと引き出しの組み立て
ここからさらにモノサシと引き出しを軸に実践を想定し、観察するポイントと引き出すべき選択肢を事前に組み立てておきましょう。
実践中に頭の中にぼんやりと網羅できる情報量に留めておき、慣れてきたら量を増やすことがおすすめです。
先述の例から考えるなら以下となります。
黒鍵と起き攻めの対応で相手が致命的な選択ミスをするかを確認する→相手のシエル対策習熟度によって選択肢の偏りを調整する
立ち回りの空中攻撃に相手がファジーを組むかを確認する→組めていなければスカし下段で対空シールド読み合いを拒否する。また、ファジーで対応されるキャラ固有ネタも(あれば)使用していく。
頻度の多い状況(対空ダッシュ・投げ周り・シールド)での選択のミスや偏りを確認する→発見できればその状況に持っていけるように選択肢を調整する。例:対空ダッシュを通すだけで空中空を経由しなくてもリターンが得られる
このように対戦前に何をどのように観察するのか、そして得られた情報からどのように選択肢の調整を加えていくのかを考えておきましょう。
さて、次はいよいよこの準備が対戦中にどのように活用させるのかを解説して最後となります。
対戦中の考え方
ストーリー、モノサシ、引き出しの事前準備を完了したらいよいよ対戦です。
頑張った甲斐があって想定通りにことが進んで勝利!というのもありますが、だいたいは想定外のことが起きてしまいます。
事前に準備をすることで、想定外を認知するという能力が得られ、ストーリー&モノサシ&引き出しのどこに不備があるのかをスムーズに思考できます。
もし対戦中に上手くいかなければ、その対戦は貴重な情報資材となります。リプレイを保存して自身の事前準備と照らし合わせて試合を振り返れば、よりモノサシと引き出しの精度が高まるでしょう。
これを繰り返すことで、短期間隔で駆け引きを展開させる能力や、相手の傾向を把握する能力、自身の弱点に修正を加えるといった能力が培われます。
知らない相手と対戦できるランクマッチを活用したり、ランクが離れていても面識が無い相手のプレイヤーマッチに飛び込んでみたり、普段対戦している相手にも活用して勝率の上乗せを狙ったり…
対戦の視野が広がる情報を提供できていたら幸いです。
以上
