目的
ゲーム・キャラ選びにおける意思決定の精度を高め、正しい選択を選び取る確率を上げ、最終的に後悔を限界まで減らすこと
即効性のテクニックではなく、スタートラインに立つための素地をつくる
はじめに
こちらは職業選びについて論文ベースの見識を記している鈴木祐著の『科学的な適職』に書かれている内容から、どんなゲームやどんなキャラを選んだら幸福度が高まるかを俺が個人的に考えていく文章となります。
好きを仕事にしよう!というクソアドバイスを論理的に破壊している良著なので気になる方は購入してみてください。
視野狭窄(きょうさく)が仕事選びを失敗させる
ものごとの1面しか注目できなくなり、その他の可能性を考えられなくなる状態を視野狭窄と呼びます。
大企業の管理職ですら何かを検討する際に3つ以上の要素を吟味すると回答したのは29%で、たいていは2択で終わらせてしまう傾向にあります。
やるべきかやらないべきか、のような2つの要素を吟味した場合のプロジェクト失敗率は52%で、3つ以上の要素を吟味した場合の失敗率は32%まで下がっています。
なぜ失敗するのか?
人間の脳は自由に選択することに向いていません。
その理由は、人類史の大半において自由に選択することから無縁の生活を続けていたからです。
生まれた地域や身分によって長らく生活パターンを決められていたので、人類の脳には複数に分岐した未来の可能性をうまくするための能力が進化しませんでした。
その結果、大量の選択肢を前にすると混乱や不安を無意識に感じるようになり、選択の精度を落としてしまいます。
選択の精度を下げる脳の働きの例として、・手軽で新しい情報だけに頼ってしまう
⇒難しい判断を避けたい(利用可能性ヒューリスティック)
・変えても今よりよくなるか分からないから先延ばしにする
⇒人間は基本的にいまのままでいたいと思う(現状維持バイアス)
つまり、適切な職業選択を行うためには、たくさんの要素を吟味し、混乱している脳でも精度高く処理をする知識を身につける必要があります。
この視点ってゲーム選びやキャラ選びにも活かせそうじゃありませんか?
やったらダメな選択基準
好みで選ぶ
いきなり挑戦的なテーマですね。
好きなことを仕事にするべきだというタイプと、仕事は続けるうちに好きになるものだと考えるタイプでは、前者の満足度が高いのは最初のうちで、1年以上の長いスパンで見た場合は後者の幸福度だけでなく、年収やキャリアも後者の方が優れていた。
前者は好きと現実のギャップを感じやすくなり、根幹である「好き」という気持ちに疑念を持ちやすい。その結果幸福度が下がる。
後者の場合は、トラブルがあったとしても「仕事とはこんなものだ」と割り切れるため、幸福度に影響し辛い。
また、好きを仕事に派は、仕事は仕事と割り切る人よりも離職率が高いという結果もある。
これは好きを仕事に派は、何かトラブルが起きるたびに「本当はこの仕事が好きでないかも」「向いてないのかもしれない」という疑念に取りつかれやすい性質にあるため、モチベーションが上下するので安定したスキルが身につかなくなる一方で、
仕事は仕事と割り切った方が作業の上達が速くなり、その結果仕事を長く続けるようになるからと言われている。
注意!情熱は無駄ではない
情熱を持てる仕事を探す、という考えは前述のとおりアウトですが、「投入している努力の量」に比例して仕事への情熱が長続きします。
例えば長い間続けていた趣味には、かけてきた時間と労力があるはずなので情熱を維持しやすくなります。
つまり、情熱に必要不可欠であるのは対象にあなた自身が注いできたリソースの量となるわけです。
身もふたもないことを言えば、真の天職はなんとなく続けていたら楽しくなってきたという要素が重要になります。
ゲームやキャラを選択する際には、スタート時の情熱は何の役にも立たないことを肝にめいじて、情熱は積み上げた先にしか存在しないというスタンスでいるのが望ましいです。
こちらは心理学ではグロウス・パッションと呼ぶので気になる人は調べてみましょう。
給料の高さは幸福度に影響し辛い
業界や職種で選ぶ
キャラ選びとは少し離れていた内容なので割愛します。
ここで重要なのが、「何」が幸福度に影響するかということですね。
特に給料が幸福度に影響し辛いというデータは面白かったです。
裁量権のない仕事は幸福度を下げる
会社内でポジションが高く仕事量が多い人と、ポジションが低く仕事量の少ない人では、前者の幸福度が高くなっています。
というのはポジションが高い人は裁量権があるので、適度なストレスというものを取捨選択しやすくなるからです。
一見仕事量が多く見えても、少しの努力で越えられるハードルばかりを設置する人と、
仕事量は少なく見えても、上から押し付けられた理不尽なハードルに挑む人ではストレスの質が圧倒的に違います。
楽器の弦は張りすぎても緩めすぎても良い音がでないのと同じで、適度な良いストレスというものは幸福度に影響します。
ゲームで言えば、習得練習や研究に見合ったリターンをキャラがもたらしてくれるかどうかがこれに当たると思われます。
例えば、キャラ対策で切れるカードが多かったり、立ち回りを押すボタンの使い分けが勝率に大きく影響したり、確認することでコンボ火力を大きく伸ばすことが出来るキャラは心地よいストレスを与えてくれる要素を持っていそうです。
逆に、基本コンボの火力とカウンター確認の火力が変わってなかったり、どの技をガードしても押すボタンが一緒だったりする楽過ぎるキャラや、
どんなに調べても回答が見つからないような状況の多いキャラ対策で切れるカードが少ない理不尽を押し付けられるキャラは幸福度の観点からいえば良い選択とは言えません。
ですが、これも人によっては見方の変わる指標です。
例えば基本コンボをやることにすら多くのリソースが必要な人にとっては、基本コンボをすること自体が適切なハードルと言えるので、カウンター確認が要らないことは物足りなさに繋がらないでしょう。
大切なのは自分が適度な努力をして越えやすいハードル設定が出来るゲーム、キャラかという視点です。
性格で選ぶ
職業診断の性格テストで、今のところ科学的に正しいとされているものは皆無です。
正しいかもしれませんが、証明困難な時点で精度はお察しです。。。
几帳面な性格は事務職に向いている、すらも証明出来ないのであれば、博打が好きだから高火力不安定キャラを使う、という風に考えるのは必ずしも幸福度の高い選択の材料にはなり得ないと言えます。
直感で選ぶ
職業においては直感で選ぶことは危険ですが、ゲームにおいては直感で選んでも問題は無さそうです。気になる方は本を読みましょう。
ただ直感で選ぶ人は自己の正当化に拘る傾向にあり、結果やフィードバックに対して客観的に考えることが出来ないので避ける方が無難です。
適性にあった仕事を選ぶ
これも面白いリサーチで、その人が仕事でパフォーマンスを発揮できるか事前の審査で判断することが出来るか?といったものになります。
その結果、能力の29%しか判断することが出来なかったようです。
面接、インターンシップ、職歴などはパフォーマンスの指標として何の役にも立たなかったわけです。
スト5でザンギ上手く扱えるから他ゲーでもコマンド投げキャラを…と考えるのは危険で、過去の経験はあてにせずにとりあえずやってみないと適性は判断できないと考えるのが最適でしょう。
精度の高い選択基準
自由であるか
仕事選びについていかに自由か大切かが書かれていましたが、ゲームとの相関関係は高いとは言えなさそうでした。
キャラやゲームに落とし込むとするならば、自分が「窮屈だな」と感じた部分をメモに書き出しておいて、客観的に分析することで、自分が優先したい「自由」の正体をつかむことが出来、それを選択の指標のうちの一つとすれば良いです。
達成感
達成感の大小に関わらず、前に進んでいる感じが大切です。
これを感じるためには、努力がどのような形で現れるかを理解し、努力と結果が分離していないかを判断することが大切です。
仕事においては結果が出るまでに数ヶ月かかったり、上司の知識が不足しているが故にトンチンカンな評価を下されたりもしますが、ゲームにおいてはその心配はなさそうです。
例えば新しいコンボを覚えたのであれば、リプレイを見直してコンボ選択が出来ているかどうか、その結果相手の体力を減らせているかどうかをチェックして適当にノートに「〜できた!」と書いておくだけで前に進んでいる感を得ることが出来ています。
注意すべきなのは、コンボを覚えた→勝てるようになる、みたいな段階を飛ばしてしまうと努力と結果が分離しやすくなってしまいます。
この場合は勝率ではなく、コンボの成功率、1回のコンボでどれだけダメージを取れるようになっているか、という視点から達成感を積み上げていきましょう。
明確さ
どのような課題があるのか、どう取り組めば解決するのか、ということは仕事のやる気に大きく影響します。
某C社のダウンロードコンテンツキャラは、リリースしたての時は色々と足りてない、どう取り組めば勝てるようになるのだろう?という性能をしていますが、シーズンが切り替わると大幅に強化され、もはや別キャラと言っても良いくらい勝ち方が明確になるパターンが多くみられます。
ここを頑張ればより良くなる、ということが明確であるかどうか、それを明確に出来る能力が自分にあるのかどうかはゲームキャラ選びで重要な要素になりそうですね。
多様さ
どのような変化にも人間はすぐに慣れてしまうため、飽きに繋がります。
頑張りどころの多いキャラを選ぶことで、ここも頑張ろうあれも頑張ろうとやる気を維持することも出来ます。
これは俺個人の持論になりますが、一方で人によっては一芸に特化することで長くやる気を保てる人もいます。
対戦ゲームには、ひたすら難しいコンボを実践で決めることや、コマ投げをどう通すかを考え続けることに飽きが来ないという人もいるので、自分の「飽き」に敏感になり、飽きるくらいなら多様な努力幅のあるキャラを選ぶことが大切と言えるでしょう。
仲間
自分と似ているスタンスの人が多ければ多いほど幸福度は高まると言われています。
ゲームで考えると…うーん難しい……。
人口の多いキャラを選ぶと、自由(キャラ対策)、多様(知らない選択肢や知識)が多く得られ、適度なハードル設定もしやすいので達成感も得やすいかもしれません。
強いキャラを使おう、はこの観点から考えるとあながち間違えでは無いように思えます。
好きなキャラを使わないと長続きしないよ!というアドバイスは危険で、
正しくは、(自分が達成感を得るためのハードルを設置しやすく、飽きを防止し、やる気を高く保つために多様な視点でやり込め、それらの方向性が自分にとって)好きなキャラを使わないと長続きしないよ!と言うべきですね。
まとめ
どちらかというと、こういう視点でゲーム、キャラを選びましょう!というよりかは、こういう視点は持ってはいけません、何も考えずにとりあえず続けてみて精度の高い選択基準を満たしているかに注目しましょう、という考え方が良さそうです。
面白いなと思った方は鈴木祐さんの『科学的な適職』を購入しましょう。